日常・非日常
衆議院が解散し、短期決戦の選挙戦が始まり、俄かに騒々しくなりました。選挙カーが街中を走り廻り、駅前では候補者が入れ替わり立ち替わり現われ、マイク片手に演説しています。コロナ前と何ら変わらぬ光景で、これも日常の1コマです。
選挙直前、現役官僚が与野党ともバラ撒き合戦をしていると雑誌に寄稿して話題になりました。日本の財政は先進国の中でも極めて悪い状態が続いていますが、選挙目当ての一律給付10万円、消費税減税、大型経済対策等々の大盤振舞のオンパレードで、財源無視のバラ撒きです。これでは財政の健全化は遠のくばかりで、将来にツケを残すだけです。無責任のそしりを免れません。
さて、仕事では緊急事態宣言が解除され、税務調査が再稼働しました。宣言期間中、税務調査は不要不急であると認定されていた訳ではありませんが、実質上休止していました。解除によって重しがとれ、一斉に動き出しました。休止ボケしていた頭を調査モードに切り替えなくてはなりません。早く取り戻したいと願っていた日常の中には税務調査は含まれていなかったので、あまり歓迎せざる日常です。
そもそも、日常生活が新型コロナウイルスのフィルターで濾過され、嫌なものはすべて取り除かれ、自分にとって都合の良い日常だけが戻るはずもありません。解除から1ヶ月近く経ち、一喜一憂しながら少しずつ日常が戻りつつあります。
いまだに残る規制もすべて解除され、不本意な制約なしに思い切り自分の力を発揮できるようになるのは大歓迎ですが、コロナ前の中小企業の日常は必ずしも楽なものではありませんでした。もともと限られた資源しか持たない多くの中小企業にとって、ピンチは日常・チャンスは非日常でもありました。これまでもピンチの連続を乗り越えて、生き残ってきたのが中小企業です。新型コロナウイルス感染拡大では5度にわたる津波の直撃を受け、多くの企業で体力が失われ、危機に瀕した企業もあります。失われた体力の回復は目下の最優先課題ですが、もはや支援金には頼れません。
これまでの日常がピンチの連続であったとすれば、以前の苦しい日常にまた戻りたいとは思いません。それより、そんな日常から抜け出したいと思います。企業経営においてコロナは大きな災いですが、今までの仕事や考えを改めて見直す機会を提供してくれました。何かのきっかけがなければ、日常は惰性に流されてしまいがちです。そう考えれば、災いと言えどもピンチの日常から抜け出すきっかけになります。
今は社会全体として変化が求められている時であり、そんな時代に生きる者として自らの変化は必然です。
変化の時、後戻りはできません。